私たちの身の回りにある工業製品や社会インフラの多くは,「材料」によって支えられています.航空機,自動車,建築構造物,エネルギー関連機器,電子デバイスに至るまで,その性能や信頼性は材料の内部構造に強く依存しています.これらの材料は,鋳造,連続鋳造,溶接,さらには金属Additive Manufacturing(AM)など,製造プロセスは異なっていても,多くの場合「液体から固体へと変化する凝固過程」を経て形成されるという共通点を持ちます.凝固の過程では,結晶の成長,溶質の移動,液相流動などが同時に進行し,その結果として凝固組織や溶質元素や欠陥の分布が決まります.すなわち,凝固過程は材料特性を根本から規定しうる現象であり,製造プロセスの違いを超えた基盤的な科学的テーマです.本研究室では,この「凝固」を軸として,材料特性の向上や機能性発現の本質を理解することを目指しています.
金属材料の凝固は液体が固まるだけという単純な現象ではありません.樹の枝のような形をしたデンドライト成長を伴う凝固,ミクロからマクロにわたる溶質偏析,液相流動との相互作用など,複雑で非定常な物理現象が関与しています.こうした「凝固の科学」は,従来の鋳造や溶接といったプロセスの理解に不可欠であると同時に,近年急速に発展している金属AMを理解する上でも極めて重要です.
金属AMでは,レーザーや電子ビームによる局所的な急速溶融・急速凝固が繰り返され,従来プロセスとは異なる温度場・凝固条件が形成されます.その結果,微細柱状晶や準安定相の形成など,新たな材料特性につながる組織が形成される一方で,欠陥や偏析,残留応力といった課題も顕在化します.
本研究室では,凝固の科学的理解を出発点として,金属AMにおける材料組織形成と特性発現を体系的に捉え直すことを目指しています.
金属AMにおける凝固現象は,ミクロンスケールの溶融池内でミリ秒以下の時間スケールで進行します.このため,従来は凝固後に残された組織から間接的に現象を推測するしかありませんでした.
本研究室の大きな特徴は,大型放射光施設SPring-8を用いた高時間分解のその場観察により,金属が溶融し,流動し,凝固していく瞬間を直接捉えている点にあります.放射光X線イメージングを用いることで,溶融池の挙動,凝固前線の移動,液相流動,スパッタ発生など,金属AM特有のダイナミックな現象を実時間で観察しています.これにより,従来はブラックボックスであった凝固過程を「見える現象」として捉え,その理解を理論やモデルと結びつけて深化させています.本研究室では,このようなその場観察を通じて,金属AMの理解を経験則から科学へと引き上げることも目指しています.
研究内容や研究室に関するご質問がありましたら,お気軽にお問い合わせください.
If you are interested in our research or would like to know more about our laboratory, please feel free to contact us.